亜鉛を摂るとテストステロンが増える?-医師がお答えします

亜鉛は、免疫の正常な機能、細胞分裂、栄養素の分解、蛋白質合成など、体内での100以上の化学的プロセスに関わる重要なミネラルです。テストステロンレベルや生殖能力など、男性の性的健康にも関連することがわかっています。一般向けに販売されているサプリメントなどをみても、亜鉛の含まれているサプリメント、亜鉛が含まれているものは多く見受けられます。

亜鉛とテストステロンの関係性

亜鉛が不足するとテストステロンの低下に繋がり、またテストステロンを生成する精巣の細胞に影響を与える可能性があります。

1996年に行われた研究では、亜鉛とテストステロンのレベルに非常に明確な関係があることが示されました。若い男性を対象に、亜鉛をほとんど含まない食事を与え、亜鉛欠乏症を発症させた後にテストステロン値を測定したところ、約75％の低下が見られました。

また、この研究では、高齢男性への亜鉛の補給についても検討されました。研究者たちは、亜鉛の摂取量を増やすと、高齢者のテストステロン値がほぼ2倍になることを示しました。これが、亜鉛がテストステロンの生成に影響を与えているという強力な根拠となっています。

【亜鉛と男性ホルモン】亜鉛サプリでテストステロンUPは期待できる?

亜鉛とテストステロン値に相関があるということは、適切な亜鉛サプリメントを摂取することで、テストステロン値を上げることができるかもしれません。マグネシウムと亜鉛のサプリメントの効果を調査した研究では、1日30ミリグラムの亜鉛を摂取した男性は、体内の遊離型テストステロンのレベルが上昇したことがわかりました。

しかし別の研究によって、すでに十分な量の亜鉛を摂取している場合は、亜鉛のサプリメントを使用してもテストステロンのレベルは上がらないことが証明されました。毎日の食生活で推奨される量の亜鉛を摂取している男性では、亜鉛のサプリメントを摂取したとしても、テストステロンのレベルは上がらないと考えられます。

亜鉛は体内に蓄えることができないため、毎日摂取する必要があります。19歳以上の男性の場合、推奨される1日の亜鉛摂取量は約11ミリグラムとされています。

亜鉛を多く含む食品には以下のようなものがあります。

牡蠣 ・牛肉・カニ・シリアル・パン・豚肉・豆類・チキン・ヨーグルト・ナッツ・オートミール

亜鉛の中毒とその症状

亜鉛のサプリメントは効果がありますが、摂りすぎると有害になるかもしれません。成人男性が1日に40ミリグラムを超えて摂取すると、毒性が発生する可能性があります。亜鉛による毒性で体が攻撃されている状態は、亜鉛中毒と呼ばれます。亜鉛中毒の症状としては、吐き気や頭痛、嘔吐、下痢といったものが挙げられます。

亜鉛欠乏は比較的まれですが、欠乏のリスクがあるのは、胃腸障害のある人、ベジタリアンやビーガンの人、アルコール依存症の人、また鎌状赤血球貧血の人や栄養不足の高齢者もリスクがあります。

結論 : テストステロン補充を目的とした亜鉛摂取の効果は期待しづらい

以上のように、亜鉛はとても重要なミネラルで、テストステロンの低下と関連している可能性は確かにありますが、若年者が亜鉛欠乏症に陥ることは比較的まれなことで、また亜鉛は摂りすぎることによってむしろ有害となる可能性もあります。

テストステロンの低下をご自分で疑ったとしても、原因は亜鉛欠乏でないことの方が多いと思われますので、亜鉛のサプリメントを飲む前に医師の診察を受けた方が安全でしょう。

テストステロンの値の低下が気になる方、男性ホルモンの数値が低いといわれた方には、注射や塗薬によって男性ホルモンを補充する治療がおすすめです。この治療法は、多くの研究によって男性ホルモンの血中濃度を高め、男性らしさを向上させたりすることが認められています。当院でも男性ホルモン補充療法をおこなっておりますので、お気軽にご相談ください。

亜鉛とその効果を知る: おすすめの文献はこちら

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6010824/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8875519/
https://www.asep.org/asep/asep/BrillaV2.PDF
https://www.nature.com/articles/1602899
https://ods.od.nih.gov/factsheets/Zinc-HealthProfessional/#en36