この記事を書いた医師
荘子 万可
MARK SOSHI
荘子 万可
MARK SOSHI
医師/日本泌尿器科学会認定専門医
泌尿器科、血液透析科を専門領域として研鑽を積む中で、健康寿命を延ばしより良く生きる (well-being) ことに興味を持ち、男性機能やアンチエイジングに関して造詣を深める。 クリニックTEN では、一般内科外来や健診の他、メンズヘルス外来を担当する
ミノキシジルタブレットとは?
発毛成分「ミノキシジル」
AGAの治療に使われる成分のひとつとして、「ミノキシジル」という言葉を耳にしたことのある方は多いでしょう。実はミノキシジルは、発毛剤として開発されたお薬ではなく、もともとは血圧を下げる薬(降圧薬)として使われていました。ところがこのお薬を使用している患者さんに、副作用として毛が増える人が多いことが分かり、それを利用して発毛剤として使われるようになったのです。
ミノキシジルの一般的な使われ方
現在、日本では、ミノキシジルは、外用薬、つまり頭皮に塗る塗り薬として使うことが認められています。日本皮膚科学会が出しているAGA治療のガイドラインでは、ミノキシジル外用薬の有効性はグレードA「ミノキシジル外用を行うよう強く勧める」と記載されており、プロペシアに代表される内服薬と組み合わせる等して使われることが多いです1)。
ミノキシジルタブレット(ミノタブ)は使われないの?
日本では、タブレット(錠剤)として飲むことは認められていません。そもそも日本では、発毛剤としてだけでなく、もともとの開発目的であった降圧薬としてミノキシジルタブレットを内服することも認可されていないのです。世界を見ると、血圧を下げる目的としてミノキシジルを飲むことを認めている国はあるものの、発毛目的の内服薬として飲むことを認可している国はひとつも存在しないのが現状です。先ほどと同じ日本皮膚科学会のガイドラインでも、ミノキシジル内服はグレードD「ミノキシジルの内服を行うべきではない」とされています。
ミノキシジルタブレットの副作用
なぜ認可されていないの?
では、なぜミノキシジルタブレットを認可している国はひとつもないのでしょうか。それは、ミノキシジルタブレットは、発毛というメリット以上に、重篤な副作用を引き起こすリスクがあるというデメリットを持っているからです。
ミノキシジルタブレットの内服によって胸痛・心拍数増加・動悸・息切れ・呼吸困難・うっ血性心不全・むくみ・体重増加などの重大な心血管系障害が生じることがあります。そもそもミノキシジルは、血管を広げることによって血圧を下げるお薬です。血管が広がるので、ひとによっては心血管系に負担がかかり、動悸等の症状が出てしまいます。降圧薬として医師が処方する場合であっても、医師は副作用が出ないように、他のお薬を使って症状をコントロールします。血圧を下げる目的で使う時には、副作用のリスクをコントロールできるために、血圧を下げるというメリットがデメリットよりも大きいと判断されるために、ミノキシジルタブレットを降圧薬として認可する国があるのです。
しかし、発毛目的となると、メリットより危険性の方が高くなってしまいます。発毛のためにはより安全に使えるプロペシア等のお薬があるにも関わらず、ミノキシジルタブレットを使って心臓に負担をかけてしまうことは避けるべきなのです。
周囲にミノタブを飲んでいる人がいる?
インターネットの発達した現代、ミノタブを個人輸入で入手して飲んでいる人が一定数いることも事実です。しかし、個人の独断で飲んでいるということは、心血管系の副作用を抑えるような他のお薬を医師が調整していないということを意味します。これはとても危険なことで、ご自身のためには避けるべきです。
必ず適切な治療を受けましょう
脱毛治療は、医師の問診と診断に基づいて適切な治療薬を選び、そして継続していくことが何よりも大切です。当院では医師の問診と診断に基づいて適切な治療法を選択しておりますので、何か気になることがございましたら、ぜひ一度お気軽に受診ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会ガイドライン、眞鍋求・坪井良治・板見智・長田真一・天羽康之・伊藤泰介・乾重樹・植木理恵・大山学・倉田荘太郎・幸野健・齊藤典充・佐藤明男・下村裕・中村元信・成澤寛・山㟢正視、男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版、https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf